大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(あ)1812 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人A本人並に弁護人広瀬通の上告趣意は後記のとおりである。

弁護人広瀬通の上告趣意第一点について。

所論の前段について。原判決が第一審判決の挙示する証拠のうち、(二)被告人

に対する検察官の弁解録取書の被告人の供述記載部分は、「遂に如何なる犯罪事実

を読聴けたものなるかを推知せしめるものがないから、これを証拠とすることはで

きない。これを証拠としたのは違法であるが、これなくしても原判示犯罪事実は十

分認められるから、結局判決に影響を及ぼさないものである」と判示したことは所

論のとおりである。しかしながら、判決の挙示する証拠の一部に違法があつても、

その他の証拠によつて犯罪事実を十分に認めることができるときは、結局その違法

は、判決に影響を及ぼさないとするのは、当裁判所の判例の趣旨とするところであ

る(昭和二五年(あ)第二四九〇号同二六年七月二六日第一小法廷判決、集五巻八

号一六五四号参照)。原判決が、所論摘示のように、第一審判決挙示の証拠の一つ

について違法を認めながら、しかも判決引用の他の証拠によつて判示事実を十分認

めることができるとし、結局その違法は判決に影響を及ぼさないと判示したことは、

当裁判所においても十分認めることができるところであつて、原判決になんら所論

のような違法はない。所論引用の判例はいずれも旧刑訴法に関するものであつて、

新刑訴による本件には適切ではない。また所論の後段は、自白を内容とする証拠を

他の証拠に先んじて取調べた違法があるというのであるが、この理由は原審におい

て主張せられず、従つて判断もされなかつた事項であるから、適法な上告理由とな

らない。

同第二点について。

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所論は、第一審判決の証拠の取捨選択が経験則に反するにかかわらず、原判決は

この違法を認めずこれを維持したことは、最高裁判所の判例に違反するというので

あるが、原判決が、所論引用の判例に反するような判断していることは認められな

いばかりでなく、論旨は帰するところ、被告人の警察における自白は、任意でない

と推測すべきことが、経験則に副う所以であるという独自の見解を前提として、原

判決の採証についての経験則違反を主張するのであつて、とることを得ない。

同第三点について。

所論は、第一審及び原審が、現場における足跡及び現場に遺留された葉書並に細

鋸等の証拠の取捨選択について、経験則に違背した違法があり且つこの違法は最高

裁判所の判例(第二点において引用した判例と認められる)に違反するというので

あるが、原判決はなんら引用の判例に違反したところはないのみならず、結局所論

は、原審の専権に属する証拠の採否を非難するに帰し、適法な上告理由といえない。

被告人本人の上告趣意は事実誤認、量刑不当の主張に帰し適法な上告理由となら

ない。

その他記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由も認められない。

よつて刑訴四〇八条に従い、全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

昭和二七年六月一七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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